· 

法務局の遺言書保管官(!)に教えてもらった。 新しい遺言制度。

令和2年7月10日に法務局による遺言書保管制度がスタートしてから,ちょうど2か月間が経った令和2年9月11日に開催された神奈川県司法書士会主催の研修会「自筆証書遺言書保管制度の実務と手続きについて」に参加してきました。

ご講義いただいたのは横浜地方法務局供託課の「遺言書保管官」の方です。 

今回スタートした遺言書保管制度によって「遺言書保管所」(神奈川県では横浜地方法務局本局の供託課と各支局)という新しい役所や「遺言書保管官」という新しい役職が創設されました。

既に横浜地方法務局本局では約250件超の保管申請が受け付けられたとのことです。

~ポイントまとめ~

・「検認」が不要に!

・法務局に遺言書を長期間保管してもらえる! 

・関係する相続人等にお知らせが届く!

遺言書保管制度の利用方法に関しては法務省民事局商事課の「法務局における自筆証書遺言書保管制度について」が図解等によって解りやす説明されています。

本研修会は参加者全員が司法書士なので大きく①遺言者による手続の段階と②遺言者の死後に関係相続人等が行う手続の2パートに分けた上で,関連法令等(法律・政令・手数料令・省令・取扱手続準則)に関して遺言書保管官の方に詳細解説していただくという専門性の高い講義内容でした。

 

遺言者による手続(生前の局面)は住所等変更の届出以外は遺言書保管所へ出頭して行うことが必要となりますが,遺言書を複数作成して複数回保管申請をする場合には同じ保管所に行う必要があるとのことです。その間に遺言者が遠方に転居した場合はどうなるのだろうか等と気になりましたが,まだ制度がスタートしたばかりなので現場の相談事案等を集約していく中で制度が改善されていくだろうとのことです。

 

最近の相談事案であったのが「受遺者をAとする,Aが遺言者より先に死亡した場合にはBに遺贈する。」と記載されたようないわゆる予備的遺言の場合Bは確実に受遺者なれるか分からない立場ですが,それでもこの保管制度においてはBも受遺者として記録されるとのことです。つまり「受遺者となりうる者」が受遺者として記録されるので,Aが生存していても保管通知はAだけではなくBに対してもされるとのことです。

また,「Aが○○大学に入学したらAに遺贈する」といった条件付遺言の場合も同様Aは受理者として記録されAは受遺者として取り扱われるとのことです。なぜなら,一度保管がされると保管官であっても遺言書の中身は見られないので作成・保管の段階で「受遺者となりうる者」がAであればAが受遺者として取り扱われるからとのことです。

・・・Aが○○大学に入学したか否かは保管官はチェックなんかしないということですね。

 

コロナ禍の影響でここ数か月間の研修や会議がほぼ全てオンラインで行われていました。

 

 

会議や研修がZoom等によるオンラインだと,わざわざ横須賀から横浜まで行かなくて楽なので今後も利用していきたいですが,やはり集合研修だと集中して聴くことができるし,司法書士仲間に会うことが出来るので改めて集合研修の良さを実感することが出来ました。